は、表紙の装幀に何かの実《み》のようなふっくりした薄赤い二粒の円い珠飾りのついたののことだろうと思います。ありがとう。よろこびということばを、ひとくちに浅く云わず、その一つ一つの響きを大切に区切って味うと、これは何と深く立体的な句でしょう。心の峯々のようなボリュームさえあります。詩集が私の生活にもたらされてから、はじめてそういうよろこびの感じが実感のなかにとらえられているのもうれしいことです。この頃ひらく頁には、希望という句もあるのですが、それは非常にユニークなもので、何というのかしら、希望の先駆、それは人が希望と呼んでいるそういうものになるのだろうかというような極めて複雑微妙な格調のものです。ニュアンスのごく濃いものです。よろこびの豊富横溢している数章と、この希望のそよぎは風の中にあって、という句との間には、時間という虹のそり橋が描かれています。しかも、瞬間に圧縮されるめずらしい形での生活としての時間が描かれていて、なかなか興味つきぬものがあります。插画が作者たちの手で入念に描かれていて面白いこと。
紀さんは、なかなかよく経験して来ています。責任(部下の生命その他)を深く知って来た
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