いろ様子がちがって参ります。
私はこの頃せきしているのよ。大して風邪をひいたとも思わないのに、せきになりました。いきなりせきになったの。あなたは? 呉々もお大切に。
羽織の紐、ほんとにいいのよ。そういうものにある美しさは格別ね。男のなりで思い出しましたが、佐野繁次郎ってイヤミの標本は洋画をやるが伊東胡蝶園で俳優花柳方面の白粉屋の主人なのね、成程と感服いたしました。では明日ね。
十二月二十六日(消印) 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書 速達)〕
十二月二十五日 第八十六信
これが今年の一番おしまいの手紙となります。きのう、ほぅとお思いになったでしょう? 現れたのが寿江子で。
二十二日にね、『文芸』のすっかり完結して、予定の二十日より二日のびたけれど、序文、目次、年表とりそろえ『中公』が五時で終るのでフーフーかけつけて、やっと渡し、やれやれと本当に一年越しの重荷をおろしいい心持になったところ、大瀧の叔母に当る人が永く胃|癌《がん》でいたのが亡くなり、そのお通夜ということになりました。
この大瀧潤家という叔父は不運な男で、林町の母と同じ年故今六十六でしょうが、三人の妻
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