たものね。あのときは一切人に会わずで。私たちにそれは出来ないが、しかし、粘るところは、ざらにない力です。そういうところのよさは学ばなければ。蓼科へ行って秋声の伝記かくのだそうですが、『文学の思考』の序文が与える感想とそのこととをてらし合わせ、私はああはしまいという思い切です。勉強勉強と思うのよ。うちにねばって、休むこともうまくやることを学んで、勉強勉強と思います。原っぱへ行って休んで来て、それでいいと思うのよ。美しい詩集からいつも新鮮にされるよろこびを与えられながら。
 そういうようなわけですから、どうぞ私の殊勝な志をめでて詩集についての物語も折々おかき下さい。
 でも、今ふっと考えて奇妙なことと不思議に思いますけれど、あの詩集の中に冬のつめたさはつめたさとして一つもうたわれていないの、面白いことね。「濃い晩秋の夜の霧に」という題の覚えていらっしゃるでしょう? 遠い野末に見ゆる灯かげという句のある。そして、女主人公が、その野霧が次第にうっすりとする街へかえりながら、自分が不器用で、才覚なしだったものだから、のぞみのよこをただとおってしまったことについてのこりおしく思って歩いている心持を
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