あります。その女の少女時代の生活は、母と子とのいきさつで、子供にとって、母が子供を負担としているということがどんなに苦しく腹立たしいことかということを痛感するような生い立ちでした。子供を生むということについて、無責任にはすまい。そう思って成長して来ました。その女があるときに結婚するの。その対手のひとをその女はしんからすきで、そのひかれる心は健全で、その女が対手に対する自分の感情を自覚したときには同時に母となるよろこびへの渇望もめざまされていました。しかし生活の条件へのその女の判断はそのままの形でその欲望を実現させませんでした。その判断はあやまってはいなかったのです。その夫婦は、そのような判断への確信もともにもって充足して生活して来て何年かすぎました。あるとき、そのような生活の流れへ一つの春のさきぶれの嵐のような変化の予告、予想、或は想像がもたらされました。そのことによって、女の経験した内面的な展開は極めてリアルで激烈なものでした。女の生涯には幾度女としての誕生があるでしょうか。女の性格のうちには更に新しい何ものかが開花されました。感覚の豊饒さが加えられました。新しい命へつらぬく良人への
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