もうねて、あした一寸そちらへゆけるようにしたいと思っているところ。熱中して一葉の補をかいて居ります。なかなか面白い。そしてね、一息かいて、椅子の背にもたれるとき、ああ今一寸そっち向いて、向いたところに顔があったら、と思います。寿江子がいてもかけるけれど、どうかしらなど思いながら。ほんとにどうかしら、この頃なら、ね。
九月二十四日(消印) 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
九月二十三日 第六十三信
今上野です。お祭日で、上野は天王寺の墓地へお参りする人ゾロゾロよ。そして、この人通りは黒い紋つきをきたお婆さんや、赤い洋服を着た孫づれというのですから、動きは到ってまちまちで、あぶなっかしい賑いです。すいていると思ったらなかなかの人で、本を出して貰うのに一時間も待ちました。今度は何と御無沙汰したでしょう。九月十六日づけのお手紙十八日に頂き、十八日の速達は夜おそくつきました。そのことはお話しいたしましたね。きのう一葉を終りました。六十枚かいてしまった。ああいう風に偶像化されている人のことは、やっぱりついこまかに見てしまうものだから。あのひとと『文学界』のロマンティストたちとの
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