)私に幸福論という本をまとめないかという話なの。まあ今とりかかれる仕事ではないから別に約束いたしませんけれども、私はこれはあなたに早速報告しなくては、と思ったの。だってその人が云うには、自分の生活に一つのまとまりをもっていて、そこから私なら書けるという気がしたのだそうですから。いろんなものをよんで。このことは大変愉快と思うのです、私たちとしてやはり愉快と思うの。そうでしょう? 私がそういう風に生活的に充実して、生き生きとした所謂《いわゆる》幸福について語れる者という印象を第三者に与える存在として生きているということは、私として、第一にあなたに語りたいことであるわけでしょう。そういうことから、私は自分の幸福の源泉を新たに感じる感動を押え得ませんもの、ね。ここには何か一寸には云い表し切れない複雑な美しさの綜和がこめられているのですもの。そして、一般的な場合としていうとき、そこにある人間の高さ、美しさ、こまやかさ、絶え間のない心くばりの交流について、そのほんの一部分のことしかふれ得ないのですものね。何だかなかなか面白い。きょう寿江子来たからその話したら、すぐ「ああ、それはきっと面白い」と申し
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