年忌も一緒でしたのね。光井のお寺の、顎を上へつきあげたような顔をしている坊さんが、小坊主をつれて来てお経をよみました。この坊さんはこの間気がふれたのですって。畑で蛇をつかまえてそこにいるお百姓に、これを食えと云ったが、どうもそういうものはと辞退したら、そんなら俺が食うと云ってくってしまったのだって。光井の家へ来てどなって叫んだそうです(何と叫んだかは知らず)。その人がケロリとして(癒ったのですって)お経をあげました。
それからおきまりのお膳が出ました、ああいうときのお膳の上のもの覚えていらっしゃる? 黒塗のお平《ひら》にパンが入っていたりいろいろ面白い。私もお客様というので、そこへ坐って頂きました。
それからお墓詣り。それから光井の寺詣り。これは達ちゃんと私とが総代でやりました。
三年回でしたから、私たちからのお供えとして、丸帯の立派なのをこわして仏壇の「打《うち》しき」をこしらえてもって行きました。お気に入った様子です。光井へゆく途中はまるで昔日の俤《おもかげ》なしとなりました。あの島田市までの途中も家が建ち、道普しんしているけれど、島田市から野原迄と云ったら全く全貌をあらため
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