かにされてゆくことに驚歎いたします。彼女はもとからそうでしたが、やはり敏感です。愛に感じやすくて。よろこびが戦慄のように走るとき、何と上気して気を失いそうになるでしょう。ひき入れられるような身ぶりのとき、いづみ子が声ない叫びで微《かすか》に唇をあける様子、そのふれる感覚にまかせてゆく風情。非常に趣ふかく、昔の物語りの表現ではないがあわれふかい趣です。
 本当にあなたが御覧になったら何とおっしゃるでしょう。ふりわけがみの幼なじみが今のいづみ子に会ったらきっとおどろき、そしてどんなに恋着することでしょう。彼女にとってそれは意外ではないのですものね。自分の心は知っているのですもの。このこの成長、美しくゆたかな成長はみものと思われます。
 私はよく自分が女の芸術家に生れ合わせて、いつか何とかして、こういう微妙きわまる女のいのちの姿を描き出してみたいと思うことがあります。
 岡本かの子はそういう生の力を或点やはり感じていたのでしょうが、その表現、その再現の世界は、謂わばそういうものに感動する自分の様々の姿を鏡にうつしてみて、我から我に惚れている範囲ですし。
 アベラールとエロイーズの話、御存じで
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