武家時代のことですが。
近松なんかは義理というものに挾まれた武家の女の苦しみは描いて居りますが、その妻のプロテストは義理ではありませんものね。
さあ、こんなに種明しをしてしまって、何だか、きまりわるいこと。肝心の一番手近のはまだ何ともきまらずボー漠としているのに。でもね、歴史小説にしろ、女のかく歴史小説というものの特色はあり得るという確信はあって、やはり面白うございます。これらは何年の間に出来上るでしょう。これで案外遠いものほど近いのよきっと。つまりお菊その他が、アイヌより先になり得るのです、いろいろの点から。
ああこれだけ話して、すこし心持がよくなりました。こんな種、太郎ではないがダイジダイジで、喋らないしね。ロンドンやパリが、その女のひとの目で見られるのも面白いこと。ではどうぞお元気で。忙しすぎないように。
三月二十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
三月二十二日 第二十二信
ひどい風! 南の方の空は赤茶けた埃の色でよどんだようになって居ります。
今、妙なことして書いているの。ペンをもっている方の手首に、ホータイのあるのはけさ御覧のとおり。その上、お
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