の詩の心は何とまざまざと生きて来ることでしょう。あなたの御愛誦の詩のはなしをきかせて下さい。では又、ね、お大切に。

 三月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 三月十七日  第二十一信
 きのうから手紙かきたく。夕飯をしまって、さて、と思っていたら人が来てしまいましたので到頭昨夜は駄目。
 けさは、普通の時間に多賀ちゃんがおきましたので随分うれしかった。私はほっとして、すこしね坊。
 御飯たべてから、多賀ちゃんは、うれしそうに上機嫌で、きのう寿江子がもって来て、かえるとき忘れて行ったパンジーを、植木鉢に入れました。たかちゃんは器用にいろいろよく知っているのね。野原の小父さまの御存命のころ、台所の柿の木のところから、ずっと十円も種をまいて花つくりをしたのですってね。小父さまがくしゃくしゃして変になりかかると、そこへつれ出して楽しんだとのこと。いかにも可愛い鉢が三つ出来て、私も手や前かけを泥だらけにしながら大よろこび。
 それから二階へ上って、恐ろしい顔の天使をよんで、(吉例、読書よ)メモを見たら急にあわてました、というのは、十七日にわたす原稿が一つならずあるものだから。
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