て、ああもう四度目ぐらいだ、やめとこう、と思いなおす次第です。
 きものの話ね。長襦袢がもうじき出来ます、昔、アキスにとられておしまいになってから、以来は季節ぬきのものを着てばかりいらしたから今年は、すこしまともなのをお着せいたします。さっぱりした落付いた、いいのよ。私がそんなもの選んだり縫わせたりするのは一つのうれしいことなのだからもうすこし待って着て下さい。四月五日迄に届けますから。
 本のこと、きょう、やめていいと仰云ったの一冊十五円だってね。あのリストの皆注文してこれも二冊云ってあったから、マアとびっくりして早速とりけしました。
 揃ったらおっしゃった五冊だけそのようにいたします。
 ホトトギスというものは、一声をききつけて戸をあけるともう姿は見えないというけれど、一度その空を飛んだことだけはたしかです。うちのウソは行こう行こうと鳴くばかり、ね。洒落にもなりません。
 笑っていらしたって。そうきくといくらか安心いたします。
 日当のこと、もうじきわかりますが、旅費としてそちらへ行く分なんかないのよ、そうらしい様子です。はっきりしましたらいずれ。
 お手紙はまだ着きません。ついたら、ああ御苦労さま、と云ってやりましょうねえ。本当に。この近いところを十日以上かかるためにはどんなに手紙もくたびれるでしょう、可哀そうに。
 けさは、私は妙に眼が充血して痛んで、すぐ仕事しようと勢こんでいたのに、多賀ちゃんを出してから、リンゴをすって、それをガーゼにつつんで昼まで両方の眼をひやしました。昨夜眼を洗いたいナと思ったのにホーサンがなくて、けさはもうそう。風がひどかったためでしょう。もう大体大丈夫。しかし今夜はホーサンで湿布してねます。今、一つ書き終って、河村さんや何かにハガキかいて。――そう云えば中村やの話、おききになりましたでしょう? ひどいわね。それに、ああいうところでものを買うのは女が多くて、女の盲信的なところが又いかにも郊外住居の中流人趣味があって、あすこの混雑には反撥するものがあります。※[#「凩」の「木」に代えて「百」、第3水準1−14−57]月の何かを見つけてお送りいたしましょう。予約注文でおまんじゅうは十ヶですって。でも、私はニヤリとするのよ、ブッテルブロードは、あれはうちで美味につくることが出来て、ね、そうでしょう、胡瓜のきざんだののせたのなど、ね、あんな
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