ました。辻町のところに広告が出ていて、同番地に、二階6、下8、4.5、6、2という家と、六、三という小さい家とがあるらしいので、小さい方へ寿江をつめこめばうるさくなくていいとも考えて出かけたら、どうかしてそこがなかなかわからないで別の家を二つ見てかえってしまいました。番地が大変とんで、ごたごたして居るのですね。そして、その附近はそこに近いが却って不便で、他との交通の工合もわるい。近いくせに、いざというとき自動車がひろえないからここからのようにいそいで十分で馳けつけるという芸当が出来ず。
 大塚の方へ家が出来るかもしれないというのは秋からのことです。只今のところ、寿江子は五日か六日に熱川へ又行って暮し、五月ごろ私が御一周忌で島田へ行く間、出て来て留守番をし、又あっちへかえって九月に出て来て、それからすっかりこちらに落付くつもりの由です。いろいろのいきさつもあったしするから、実際的な仕事の修業をやるのもいいと思いますが、やっぱりしんから好きであるし、女で作曲をちゃんとやれる人というのも出ていないし、大決心でやるつもりらしいのを見ると私もやっぱりたすけてやりとうございます。寿江子はああいう性
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