方で生活を計っているから御安心下さい。気分はおだやかで、追々夢も減って来て居ますが、この力の充実しない感じは微妙で、ちっとも戸外へ出たくない。十七日に家から出たぎり。冬はこういう内部的な肉体の恢復というのはおそうございますね。傷のところは大層工合よく肉がもりあがって来ていますが。今の私の体の感じは面白いところがあります。肉体の奥ふかい全体にまだ衝撃《ショック》の余波がのこっていてとれない、そういう感じです。常に不調和というのではない、調和はとれた感じだが、その水平線が低くて、引潮で、時々ああアと思い出したように肉体の中に疲れを覚える。そんな工合。幸二階は日光が十分さしますから、大体二階暮しでのんきにしています、横になったりよんだりすこし書いたり。そちらではこの冬風邪さえおひきにならなかったのだから本当にようございます。私は自分が病院でいた間どの位それをうれしく安心に思ったかしれません。本当に私はよく気をつけますから、お互に今年は好調にやりましょう。
 私の場合について云うと、十二月のダラダラ風邪や今度の切腹やその後のこういうやや弱っている状態は、内部的には様々のプラスとなっているのは興
前へ 次へ
全766ページ中53ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング