け行けばややましだ、という点を自分で見て、大所高所を目安としての未熟さを身に引そえて感じないようなところに、未熟さが現れていたのだと思われます。云わば未熟さが手がこんでいたと思う。
それにしても、あなたは本当に、何という方でしょう。自分の妻であるということでは決して一人の作家たるものを甘やかさない、一層甘やかさない、その弱点をも最も具体的につかんでいる批評家として在る、ということは、何と感動的でしょう。その長所をも、一作家として同じ程度に掴ませることが出来ないとしたら、それは何と悲しいことでしょう。(これは決して、あの手紙、この手紙の部分について云ったりしているのではありません。この頃私はあなたに対して微塵《みじん》もひがんで居りませんから。全体として感じているから。病気を直すときは病のある部分について語るということは分っているから)
家のこともね、やはり全体とのこととして考えて居ります。目先のことだけで、林町へひっこんだような暮しかた、何だか虫が好かないのです。元の杢阿彌と笑っていらしったこと、それほどでないにしろね。あっちを根城にしておいてそちらの近くに部屋を見つけることが一番
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