もりのようです。そうすれば私とは暮せない。私はここよりもそこから遠いところへ移ろうとは考えないから。それにピアノ! フー。実にフー。自分がひくときは勝手なものですが。私は下手だから平気だ、と思っています。
 戸塚のター坊が小学の一年に入ります。お祝いに靴。それからもう二人女友達が結婚します。それにもお祝。そのひとたちは社交的な意味でなしに私たちから祝われたいの。又おひささんに私は昨夜も冗談云って笑ったのだけれども、おひささんの良人になるひとから私はよっぽどありがたがられていいと。そうでしょう? 例えば、どんなに御亭主の云いつけは守るべきか、という実地教訓を身をもって示しているのですもの、そして、そのためにおひささんだって居睡り時間が減ったのですものね。
 瓶《かめ》の薄紅梅、もう満開をすぎました。散りはじめて、火のない火鉢の上にのせてあるナベの水の面に花弁が二片三片おちて居ります。
 今夜、ねずみ退治をやります。いやな鼠! 私たちは退治なんかきらいだから、いい加減にすればいいのに。人参をかじり、夜中目がさめるほど戸棚をかじる。ポチは鼠をおどかす役に立たず。
 梅の花の匂いはいやではない
前へ 次へ
全766ページ中183ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング