事をもっていたし、「虫の生活」のチャペックね、あの人なども死ぬ間際までチェッコのために実に立派な努力をしつづけ悲劇的に終っているようです。チャペックの細君は女優でアメリカへ行って暮すことを考えていたらしいが、チャペックはチェコにいられないがチェコ以外のところに住もうとは思えないという心持であったらしい。アメリカに対する楽天的期待を抱けなかったところはさすがに諷刺詩人としてのチャペックの現実性です。けれども、チェコにいられなければいられるところで一番よく生きて行こうという心持、歴史の将来を見る目をそらさない勇気を失ったらしいところも亦、「虫の生活」のチャペックらしいと思われます。芸術家の生活に吹きよせているものはどこでもなかなか快き東風とはちがったものです。
面白いことが目につきます。それは音楽について人々が何か一寸これまでとちがった態度を示していて、林〓氏が何か書いたり宍戸儀一氏が何とか云ったり。世界を流れる言葉としての音楽が、小道具として登場した形です。作曲家の道もえっちらおっちらですね。寿江子など一生にどの位までやれるか。寿江子はまだ主観的で、自分の音の骨ぐみしかなくて(小さい一
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