究所の建物でしょう。こうして見ると随分ギッシリとして大きいことね。校舎、研究室皆あるから。そして、信濃町の通りのソバや洋食やすしや、皆この一ブロックのおかげで御繁昌というわけです。((三)までで終り)
一月六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 慶応大学病院より(封書)〕
一月六日 第三信
明るい午後。風がきついらしいけれども、実に実に青い空。東京の正月はじめの空の色も澄んでいますが、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の一月の白雪の色、日光の燦き、黒く濃く色とりどりの家の屋根から立ちのぼっている白樺薪の煙など、いつもよく思い出します。冬らしい冬の光景として。
その後いかがでしょう、やっぱり風邪もひかず御元気ですか。四日に繁治さん行きましたか? かえりにもしやよって呉れるかと待っていたら来ず。きのう五日故栄さんでも来ると思ったが来ず。本日午後二時近くですが、まだ来ず。待ちながら文庫の下らない恋物語(ドイツのロマンチシスムの見本のようなもの)を三つもよんでしまった。どうしたのかしら。行かなかったのかしら。行かなくて、わるいと思ってひっこんでいるのかしら。どうしたのだろうと考えな
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