ての研究ではイギリスのクウィーン・ヴィクトーリアの少女時代をしらべたものなどイギリスの研究にまさっているという面白い現象もあります。デュアメルが、この特輯に短い感想をかいていて、いろいろわけのわからない考えかたもあるが、なかで、文化と文明、カルチュアとシビリゼイションとを互に関係しつつ二つは一つでないものとしているところは当を得ています。地球の各地におけるカルチュアは即文明ではなく、文明はその総和的な到達点としての全人類的水準であるということを云っている点では正しい。近代ドイツがその事実を理解しようとしないのは遺憾であると云っている。だがそこがデュアメルで、一転して文明は少数の天才によって高められるという点を強調していて、同時に、所謂実際的な国民が無用と考えるような或知性が人類の精神の成育のためには欠くべからざるものであるとも云っている。いろいろ興味があります。今日の日本文学における長篇小説の問題と、これらの長篇の含んでいる問題とを比較するとこれ又面白く、やはりフランス文学の深い奥行きを考えます。そして世界じゅうの呻きが、小説の世界にも反映していると感じる、其々の声の色、強弱をもって。
おや、もう八枚です。ではこれで中止。明日おめにかかります。
十二月分計温表
起床 計温午後四時頃 就床 計温
一 日 六・四〇 六・三 十時 六・三
二 日 七時 六・五 十時五十分 六・四
三 日 六・四〇 六・三 十時三十分 六・三
四 日 七・一五 六・三 十時 六・三
五 日 六・四五 六・四この日はひどく暖すぎた十時四十分位? 六・二
六 日 七時 六・六風邪ぎみ 九時半 六・五
七 日 七時 六・四 〃 十時 六・四
八 日 六・三〇 六・八 臥床七・三 七・五
九 日 一日臥床。
六・七 六・八 七・六 七・四
十 日 六・七 七・四 七・四 七・五
十一 日 六・五 六・四 七・三 七・三
十二 日 六・五 六・五 七・〇 七・一
十三 日 六・六 六・八 七・〇 七・
十四 日 八時。車でそちらへ一寸行った日
六・四后から床につく六・六 六・八 六・八
十五 日 床に入っていて手紙の時だけおきた
六・五 六・五 七・〇 七・
十六 日 六・四 六・六 七・二 七・二
十七 日 六・四 六・五 六・七 六・七
十八 日 ひさの姉死去急にかえる
六・六 六・四 六・四 六・四
十九 日 久々の出〓
七時 六・四 六・五 六・五(十時就眠)
二十 日 六時四十分 六・二 六・四 九時半
夜十二時すぎ苦しくて目がさめ 七・五
二十一日 朝七・五、林町へ電話午後入院、手術、后七・八(?)
二十二日―二十八日迄。病院でカルテへかいてよく判らず、六・八位から七・一、七・二の間。
二十九日初めて六・六。三十日以後朝五・九夕方六・六位にきまった。
一月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(はがき 速達)〕
十八日
今日はすっかり景色がかわって外を歩けないのが残念な屋根屋根の眺めです。さきほど弁護士のことについてのおことづけは確にわかりましたから、一筆速達いたします。親切という風に思う程でもありませんのですから。いろいろは二十一日におめにかかりまして。
一月二十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
一月二十日 第七信
十八日づけのお手紙をありがとう。二十一日に行ってシクラメンの大きい賑やかな鉢を二十三日のために入れようと思っていたところ、福寿草が咲きかけでは可哀想故、おっしゃるとおりに致しましょう。その代り今寿江子がこれをかいているまわりで大いに美術家を発揮して居ります。光子さんがいた間にもとの家の一寸見える二階の南側のスケッチをして貰ったら、何となししまりのないのが出来て感じがないのでお送しないでいた。寿江子を動員して見たら、マチスのコムポジションに似たようながら面白いのが出来そうだからやって貰っているところです。どんなのが出来るかしら。前にお送りした室内風景ね、あれの南側の面になる分です。
さて、養生のこと、勉強のこと、事務的処理のこと、ありがとう。体に力のないというようなのは一目でやはりおわかりになるのね。大抵のひとは、私の血色がよいし、活気も一通りあるのでだけ判断する。自分では血色や何かにだまされてはいず、力のない感じの
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