会をやります由。
 寿江子がこの歳は私の一番ほしいものが手に入らなくているのに同情して、珍しくおわんだのお茶碗だのをおせいぼにくれました。大変うれしく思いました、そういうものをくれる気になる位大人になったと思って。栄さんが下駄をくれました、コートの色に似た鼻緒なの。それから咲枝がすっかり見立ててキモノと羽織をこしらえてくれました。但これは全部おくりものというのではないの。だけれども来年は何しろその四割高ですから、この三四年間のために一とおりは入用というわけ。この項はこれで。
 きょうはチリ紙のために気を揉みました。なかなかもうないの。いろいろの紙類どっかのお倉でグーグーというわけでしょう。大人の童話は、つみが深いと申すわけです。
 二十三日
 ああ、やっとやっと二階へ来て、落付いて、その膝の上へ手をおいて、ちょっと御挨拶。
 けさのお手紙ありがとう。その前に一昨日のつづき。発ちゃん母子が夕飯をたべてかえるというので一緒にたべて、大いそぎで目白の駅まで出かけて、東京駅へ。案外すいた汽車の窓の中にチラリとそれらしい人かげを見たが、一向澄して窓から外へ首を出してもいないの。いそいで前部のそちらへ行ったら、もう出口のすぐのところに赤いコートに赤ショール、黒トランクを前においた多賀ちゃんが立って居ります。前歯をなおしてすっかり冨ちゃんに似てしまって。
 それから省線でかえって御飯たべて、ペチャクチャペチャクチャ。なかなか元気にして、気をとり直した様子でいてようございます。どの位いるのか野原のお母さんは一ヵ月と云っていらしたが、私は今大変忙しくて一ヵ月ではどこへもつれても行けないようだろうと思って、と云ったら、私に迷惑だろうからそう云っておいて、ということだったのですって。大きい行李が先へついて、「セルのいる時になったら又送ってやる、いて来い」とお母さん(野原)の話の由。それなら気が落付いて大助りです。やっぱり半年もいて洋裁ぐらい一通り覚えてもよいという気らしい風です。Kの話は出ません、私からは特に切り出して話すということは致しません。こちらの生活でどんな風に心持が変ってゆくか、又変っているのか、それらのことも今に自然に自発的に話として出て来る迄は。今までその一つのことにこだわってやり切れなかったのだから、すこしそれとはちがった生活のひろがりにあってもいいでしょう。
 きのう(
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