で父を失った自分たちの家庭は、そのためだけにいい家庭と云われないのか、世間はそういうものか、とどの位痛切に感じるでしょう。その苦しい心持を思いやったら、何だか私はそういう女の心、母と子の生きる心に満腔の同情を感じました。そこで、私はいい家庭の概念に異をたてるのではなく、その感じを更にひろげたものとして母と子の家庭をもそれを生きている心に目安をおいて、十分いい家庭として通すことにきめました。そして、小野宮吉さんの家庭はその生活のありようも知っているから、それをえらびました。
その写真に短い文章をつけます。きょうはそれをかいたり、徳永直さんの「はたらく人々」という女を主人公とした小説の書評をかいたり、『新潮』でとった自分の写真につける文章をかいたりこまこましたものをかたづけます。そして、又図書館仕事がはじまりますから、私はもしかしたら明朝一寸そちらへゆきます。いろいろと返事を申しあげなければならないことがありますから。というわけ。それに防空演習で月曜日ごろは出にくいでしょうから。
うちは、ふぢ江という派出婦のひと、久しぶりで気軽く立ち居するひとと暮して、気分すがすがしいようです。おミヤさんというひとは全く独特なひとでしたから。わるい人ではないが。本当に独特で、私はいつも疳《かん》の虫を奥歯でかみしめていたような気分でしたから、マアすこしの間|吻《ほ》っとします。それでも、こういう派出のひとは短期であっちこっち歩いて、そのうちの生活に心を入れず、やることだけやってケロリとしている風だから、きっとすこし永くいると自分で飽きるような傾向があるでしょうね。そういう風に見えます。それでも前便でかいた通り、私を使うような勝った気のひとではないからようございます。私のつもりでは正月の中旬ごろまでいて貰うつもりですが。もちろんそれ前に誰か見つかれば申し分はありませんですが。十月二十一日から十一月二十一日で一ヵ月、一月中旬までは二ヵ月とすこしだが、それまで飽きずにいるかどうか。飽きたら又飽きたときのことです。
稲ちゃんからハガキが来て、小説、うまく進まず、自分から書く意義を見失ってはなだめたり、すかしたりしてかいていると云って来ました。長いもの、短い時間でまとめようという気が先に立つと、やはりせっついてそんな工合になるのでしょう。それでもいずれ何とかまとめましょう。その点では大した
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