ナあちらでした、九時から。さて、きょうは十日づけのお手紙(十五日着)とけさ頂いた十五日づけの分と二つへの返事をかく次第です。
例によって私の事務的処理の鈍さについて。こちら独自の弱音器をかけぬようにとのことは、十分気をつけます。わかりましたと、只ここにいくら書いてもはじまりませんものね。云いわけも致しません。私はどうでもいいと思っているのではなく、出来るだけ即日即決の心持でやっているのだから、そのプリンシプルで一層向上が必要ということはよくわかりますし、又現実には今度のペンギンみたいな失敗をして、ある意味では百ジンの功を一|簣《き》に欠いているようなところもおこるのですものね。私はこの頃、心に僻《ひが》んでいるところがないから、くよくよしないでお小言を受けます。あなたが「仕様がないじゃないか」と仰云れば「だけれど」とは云わず、御免なさいねという心持です。(御免なさいね、ですむと思っては居りませんから御安心下さい)
『医典』については申しました通りです。紙が不足故月末迄の予定がすこしおくれるということも、覚えていらっしゃるでしょう? 南江堂へ予約しておきました。
就床成績乙下は当って居りますね。ここにいて乙下は未曾有です。書評について。それから題について。堅実簡明の趣味のことは全くその通りです。本質的なものの見かたのことについて云われていること、本当であると思いました。性質というようなものの範囲で云っていたのではなかったのです、私にしろ。やはり現実へ向う態度というものについて感じていて、それで書いていたところあるのです。ですから云われていることも至極ピッタリとした次第です。やっぱりお嬢さん性であるという風に感じていたのです。卑俗な意味での世故というものに対比しての、低い意味からではなく、ね。
時期のことなどもわかりました、御相談いたします。十月十七日までの完了をフイにしないということは大いに心にかけて居ります。この読書の完了を本年の十月十七日にするということは、私にとって決して何でもないことではない心持なのです、去年だって同じというのではなく。ね。
夏の庭のスケッチ。景色目に見えるようでしょう? 小草にかかる泉のしぶきの眺めなど。
けさのお手紙。第一註文でオールライトとなるようだと、と云っていらっしゃるお気持、そのスーッと工合がわかるようで何とも申しようなし
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