閧ワすもの。
髪をさっぱり苅っていらしたし、髭もそれていたし、白い着物きていらしたし、すがすがしく見えました。そして、極めてリアリスティックに、いろいろの性格は現れるのだからと云っていらしたこと、深く心にのこされました。実にその通りです。歴史が含んでいるだけの多面さが、結局はそういうところへ出る。よきにつけ、あしきにつけ。私もそう子供らしく考えては居りませんから安心して下さいまし、一喜一憂といううけかたはして居りませんから。
一つの仕事――文学でもそうですが――にたずさわって来る人様々の角度というものをいろいろ深く考えるし、真に仕事に献身的であるということは、どういうことかということも、新たな感動をもって理解を深められます。その点での感想は、私のこの夏を通しての最もエッセンシアルな収穫であり教訓でした。自分と仕事とのいきさつにおいても真面目に反省する心持を動かされたし、そのことについてこれまで折にふれ云われて来たいくつもの言葉の血肉性が、尤もであるとか、正当であるとかいう以上の脈搏をうって、私のうちに流しこまれたものであることを感じ直したのでした。そういう感じ直しかたにしろ、私の低さを語っていると思いました。この間うち書いた手紙はきっとあなたとしてお読みになると、私の主観的な感動が舌たらずにかかれてある印象だったろうと思いますが、あれらは、そういう私の心持の状態からでした。去年の夏の頃、私の大掃除以前に云われたことが、まざまざと甦って来て、新たに真の価値を感じさせつつ、ね、そうだろう、という無言の優しさで迫りました。いろいろ涙こぼれた心持、分って下さるでしょう? めそめそではなかったのです。
私たちは普通の夫婦から見れば、何と僅かの言葉しか交し合わないでしょう。そうだけれども、その僅かの言葉が何と活きていることでしょう、ねえ。益※[#二の字点、1−2−22]命のこもった言葉で語りたいと思います。
この頃オリザニンをのんで居ます。脚がむくむから。脚気というのではないらしいけれども。オリザニンというのは、体の疲れを直すのですってね、例えば歩くとか、何とかいうそういう疲れかたを。オリンピックのとき三共はオリザニンをうんと持たせてやったのですって、水泳なんか随分それでコンディションがよかったそうです。
きのうは髪を洗い、きょうはすべすべと軽い髪です。こう書いていた
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