、をむきながら、本の話などしました。上の娘は自然科学がすきで、理科をやりたいのですって。下のはヴァイオリンをやっている由。こういう母子三人の暮しぶりというものもいろいろに思いやられます。
夕飯まだ仕度出来ないうちに(昨夜の司厨長寿江子)若い女のひと三人どかどかと来て。人生の曙に立っている人たち故なかなかわかりたいことが多くてね。一人一人がやはり自分の問題をもっています、生活から。勉強をつづけて行くとしてどういう風にやるか、その他。結婚して通っている女の子もいます。家のことや何か率直に友達同士話しあっていて、面白いところがあります。「あら、もうかえりましょう、ね」などといいながら九時半までいました。
それから、早くたいておいたお風呂に入り。寿江子がくっついて来て、わきでフーフー云って洗いものをしていて、まるで、私まで、自分が洗濯もののような気がすると云って大笑いしました。何しろせまいのですから。
お風呂から出たら何とも彼ともねむくて、寿江子の一服にもつき合えず。フラフラになって二階にあがって、スタンド消したの覚えているかいない位です。
今朝は、すこし丁寧に台所を清潔にして、あがって来てこれを書いて居るところです。寿江子は何しろ、昨夕、台所一人でやってへばったと見え、まだおきません。寿江子きょう林町の法事へ一緒に行って、それでかえりきりになります。私は十四、十五、十六日といそがしいから、又机にへばりつき。すこし埃っぽいのは我慢してね。
人間というものは可笑しいこと。もと上落合に一人くらしていた時分、ひとり眠ること、普通の意味ではこわくもなかったし、平気のようでしたが、あの家で五月の或朝、不図目がさめたら、ベッドの横にめぐらしてあった屏風の上から、帽子をかぶったなりの背広の顔が二つ出ていて以来、一人はほんとにいやになってしまいました。こわいと、いやとは別ですね。寿江子がいなくなったら、本間さんといううちの久子という女の子に夜分だけ泊って貰おうかとも思います。このこはつとめていますから、ほんのねるだけ。朝はこちらも早いから平気ですから。こんなこと云っていても、結局誰もなくて、やっぱりひとりになって、又馴れてしまうかもしれず。あなたは、大して気にして下さらないでいいのです。私はあなたにこうやって、ああだのこうだのということ云わずに居れず喋るのですから。そうかいときい
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