A心持わるくなさらないで下さい。あのコロンブスだって、海に漂い、陸を陸をと思っていたときは、雲を陸かと思ったことだってあったのです。どんな思いで、指を私が見るでしょう、ねえ。微妙な、しんみな指たち。
きょうはあれから電話をかけて、弁護士会館へ行き、話の趣わかりました。あなたのおっしゃったことを、只手足となってあのひとの下に働くものという意味で解していて、共働者という立場での人を云っているのがわからなかった様です。やっと「ああそういうことなら」とのり気の様です。あなたのおつもりは勿論そうですね。私は間違わず理解していると思いますが。連絡上、あのひとに導かれるとしても、経験や相当学問に於ては一本立ちとしてやれる程度の人、そうでしょう? そして勿論それはそれとして新しく話をもってゆき、料金の話もされるという関係。そういうのだということがわかったようです、一人、若手で実力もあるという人がいるのだそうですが、つとめている事務所の親方(先生ね、まあ)の関係で、どうかというようなこと。明日何かの用をかね、お目にかかるそうです、そちらへ行って。この手紙はそれまでつきませんけれども、よく、新しくわかった意味に於てあなたとお話しするよう頼みました。その他のこともわかりました。いそいで居る由でした。
それから三越にまわって傘のはりかえ。お母さんのいらしたとき、自動車が急停車して、私の手首にかけていた傘の金《かな》ものの柄が殆ど直角ぐらい曲ってしまったこと、きっとかきませんでしたろうね。そのために直さねばならず、布地もいたんで洩りますから。二本の傘を直すのです。一本は私が動坂の入口をさして出入りしていたの。覚えていらっしゃらないでしょうね、骨がしっかりしていて、布地はもう破れ障子であったの、それを直して。
それからうちへかえり(池袋までのろのろ市電で、新橋―池袋です)すこし休んで髪を洗い、涼風に吹かれたというわけでした。
きょうは、家じゅうごく早ねいたします。ひさは今夜一晩このうちで眠るだけですから、どっさりたっぷりねなければならず、私は又明日からいそがしいし、ひさはいず、今夜せめてのうのうとねておこうというわけで。昨夜も明けがたまで眠れなかった。間におかれる日がちぢむにつれてよく眠れるようになるのがわかりますから、きっと、いまにあたり前になるでしょう。おかしいこと。土曜日までは三
前へ
次へ
全383ページ中206ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング