ヌこかまで行けばと思いましたが、特急でそれは出来ませんでした。でもそれは半分はうれしい涙、満足していなければ溢れぬ涙でしたから、きっともう今日あたりは、さぞやさぞ陽明門や何かのお話で賑やかなことでしょう。私たちは相当大役を果した感じですね。
昨日は大森の奥さんと落ち合ったので一緒に家へ来て本の送り出しをやって、それから雨降りの中を大日本印刷まで出かけ(『改造』の)お話していたテーマでは困ること話し、文学についての感想十五枚ぐらい来月に書くことにきめてかえりました。そしたら栄さんや稲ちゃん、お母さん一日ぐらいおのばしになるだろうと思ったと云って来ました。惜しかった。皆の忙しい時期でしたから。二十六日―七日は。栄さん、お母さんにあげるつもりだったと、いいセルの前かけをもって来てくれていました。島田へ送る由。皆いろいろ心くばりしてくれます、そして、呉々もあなたにお大切にということでした。
去月十三日以来、しず心なかったから、こうして机に向うのもうれしい。うんと本がよみたい。お母さんのおかげで、体の工合もどの程度もつか、相当もつことが確められたのでうれしく、盲腸切ったこと、早ね早おきのこと、やはり大した効果と感じます。そして更に、しんから頭をつかうのでない疲れは、肉体にも何と一時的疲労としてしか及ぼさないかということもおどろかれました。足でのつかれ、のりものでのつかれ、グーと朝までねて馬鹿のような単純な頭で、ケロリとしてしまう。書いているときそのつかれ、緊張、全くそれとはちがいます。
これから当分火・金であるとすれば、こうしましょうではないの。朝おきたら一寸した手紙、毎日(行く日はのかして)書こうと思います。ほんの一筆でも。そしたらそれらは毎日順について挨拶を送り、御機嫌伺いをするでしょう。朝出かける癖になったから私も淋しいから。それから勉強にとりかかるということにして。
書くものの下ごしらえしつつ、前からのつづきの読書又はじめます。先ず手紙かき、それからその本よみ。それから別の仕事。そういう順序でやってゆきます。
『都』の文芸欄の「大波小波」時々面白いものがあり、きょうは翻訳について書いたものがありました。『キュリー夫人伝』その他なかなか売れるその売れかたを日本作家の作品の売れかたとくらべて見ると、日本作家のものが木を見ているに対し、森を見んと欲する人間の心から買
前へ
次へ
全383ページ中164ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング