にゆきます。二十一日の宇品はそれこそ人波の押しを私の気の押しでは支え切れないから、却ってあぶなくていけないから行かず。Kという運転手がゆきます。
 達ちゃんも無事。近々坂田部隊というのと合一して大作戦がある予定の由。お母さんのところへ来る手紙、こまかに隆ちゃんに持たせてやるもののこと、自動車の車体検査についての注意等、大変はっきりと明晰に書いて来て、すっかり大人らしくなって感じられます。水のせいか何かで歯が三本虫くいになっている由、それを直すに送金してほしい由、きょう飛行便でお金と隆ちゃん出発の知らせお出しになりました。
 この手紙は、表通りに近い方の部屋で書いています。上ったばかりのところには、Kというのが、自分の机をキチンとおいて、その机の下にトランクをチャンと入れて、机の上にアザリアの桃色の花を飾って居ります。だから私はこっちの部屋。でも正直なところすこし寂しいの。私のいたところ、いるつもりのところにひとがいるから。でも、うちとすればこのKが几帳面によくやっているからというところがあって、お母さんも丁寧に口を利いていらっしゃいますし、そうやって置いていいのです。夜は下の部屋に、お母さん、多賀ちゃん、私、眠ります。こんなことでも私が早おきになっているのでどんなに楽かしれません。早ねを皆と一緒にして、大抵同じ頃起きられますから。案外のところに功徳がありました。これで私が早くおきられないと、自分でも辛かったでしょうから。このKという人の性質はその机のありぶりを見ても分るようなところがあって、なかなかの努力家、まけん気。もう一人いる広瀬という仲士はすこしぬけさんと云われますが、気はよい男です。トラックの方はこの二人がきっちりやっていて、毎日25[#「25」は縦中横]〜30[#「30」は縦中横]ずつ仕事している由です。先月は 600 位の由。ですから、お母さんもこの頃はすこし気がのんびりとしていらっしゃるわけで何よりです。
 それについてね、お母さん御上京のプランがあるのです。今ならば二人がトラックはやっている。多賀ちゃんも落付いている。二人の息子を出してしまって、お母さんはあなたの顔が御覧になりたいのです。この頃は毎日でも面会が出来るそうだから、前後十日ぐらいの予定で行って七日ほど毎日ちいとあてでも会うたらさぞよかろう、というわけです。秋に行こうと仰云いましたが、秋は
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