でハッと心に来たその機縁にあくまで執して、そこからたぐってたぐって一つの作品を書いてゆくのにやや通じるものがありますね。事柄があったって小説はかけない。そこが面白いところね。文才では事柄まではかけるが。
きのうの手紙で、うちのこと、大分ピーピー申しましたが、つづけて頻りに考えて居ります。林町の空気ともう一つの空気の間にちがいが大きすぎる。そこをあっち、こっちとうつること考えると肌にしっくりしません。もっと平押しにゆかないか、そう考えて居ります。そういう形はないかと。林町にしろ、家賃はいるのです、些少にしろ。寿江子が留守番に来たらきいて見ようと昨夜思いついた一つのプラン。寿江子ピアノのひけるアパートはないから弱っていました。郊外に暮すということがこの辺でいいなら、ここの家へ寿江子ピアノと来て共同的な経済にして、私は別にそちらに部屋をもってゆけば、客のこと、手紙のこと、その他が順調にゆき、私は変にバランスのちがった二つの間を動く感じではなく、いいのではないかと思いつきました。林町の裏、しめておく。仕事の用で来た人も用を通ぜず不便なところへ来て無駄足をする。それは困ります。表と一緒のは、いろいろこまります。生活が混るから。一寸こちらへ来て部屋にかえることも直《ちょく》ですし。家のことやる人もこちらにおいて。二階を私の室。下の六畳寿江子。四畳半を茶の間。ね。わるくないプランでしょう。本人にきかないで一人でいいと云っていたってはじまらないが。寿江子にしろ、すこしは責任のある暮しぶりも身につけ、いいのだと思うのですけれども。今の私の時間わりと気のはりでは、台所のこと、洗濯、やってくれる人がなければ非能率的です。
どうも自然の工合で、私と寿江子が近よる傾きが、寿江や私が林町とかたまる傾よりつよい。其々ちがったものによってのところもあるが。どうも、このどうもと体の工合がいぐるしいのが、なかなか実質的なので弱ります。
仰云っていた本調べました。注文したもの支那四冊、スペイン二冊。その他には
China Can Win! by Wang Ming.「支那は勝つ」
All China Union「全支同盟」
China & The U. S. A. Earl Browder.「支那とアメリカ」
When Japan goes to War「日本戦うとき」
The Chin
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