って(!)大笑いをしてしまった。お役所につとめていて、記者になったひとの由でした。
四時すぎごろ重いブックエンドもって栄さんのところへゆき、つれ立っておっかさん[自注3]のところへ出かけました。偶然半丁ほどのところへ越して来ていたのでびっくりしました。六畳の部屋をかりて壁に服をかけ、隅に譜面台などあり。清潔に小じんまりしている。そこへお母さんが相変らずの小づくりながら、つやのいい元気な姿で坐っていて、てっちゃんもいました。マア雨が降るのによう来て下さいました。そして、息子の三年目の洗濯ものを来た日に親類へ皆負って行ってすっかり洗ってやり、次の日二人で家さがしをしてここを見つけた由。来るとき、秋田のどことかとどことかとへよって九日間の切符ギリギリについたとか、汽車の食堂でパンをたべる話そして何里も来る間ゆっくら休んでいる話。三人で、あっちのバター、燻製の鮭、美味いつけものなど御馳走になりました。花をもって行ったのを写真の横に飾り、おじぎをしたら、おっかさんの実に気持のいい生活の気分と一緒に、涙が出るようでした。本当に生活のひとふしずつを愛してたのしんで、丈夫でよく働いて、つけものの話や息子の着物をさしこに刺した話や牧場で牛乳でジャガイモを煮る話や、そんな話をしているのに爽やかで気が和んで本当に新鮮です。栄さんと二人でびっくりしてしまった。悧巧なひと、しっかりもの、情のふかい人、いろいろ傑作はありますが、ここにも一つの傑作ありという感でした。そして生活する地方というものは何と面白いでしょう。一日に一遍はパンにバタをつけたのとリンゴとソーセージぐらい、牛乳とたべるのですって。そして牧場で、ホワイトソースをこしらえかたを教えてやったら、十年やっている(牧場を)のにはじめてだって、草苅に手伝いに来た人はコンナどんぶりに六杯もたべました、美味い美味いってね。あっちに暮しているのは、親戚も多く皆から来てくれ来てくれと云われ、本当に楽しくて豊富でいいのでしょう。この息子がもっとしっかりしていると申し分はないのだけれども。四月の初旬までいるそうです。四月に旭川の技師の細君になっている娘が(妹娘。)赤ちゃんを生むのでその手つだいのためにかえるのだそうです。すこし暇が出来たら何かよろこばせることを考えるつもりです。
達ちゃんの手紙、お話したようにあなたのお手紙を見ての分です。もう楊柳
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