に心理的に分析されて居り作品ではそこに重点がある。志村がそう動いて来たのなら、筋がとおったようでもあるが、駿介という別箇のものをつくって、それを動かすにしては志村と二重うつしです。猶々微妙ないくつかの点もある。河が溢れて堰《せき》を既にちろちろ切りかかって居るとき、その堰に自分の手に鍬をもっているから、水はこちらへ流れようとする力を示しているのだからと堰の土を掘り下げる百姓があったとしたら、洪水ふせぎに出ている村人はおこるでしょう。
 二日に、徳さんにも夏みかんだの何だのを御馳走した気でいたら三十一日に帰京したというハガキを貰い、きょう午後見えました。やつれてはいるが元気です。
 ひさの代りに来ている栄さんという娘は、おひささんより他人の家で苦労しているので、仕事というものの事務的な処理をわきまえていて、几帳面なところがあって、よいところがあります。これは随分の見つけものです。この次お目にかかる迄に一つ考えておいて頂きたいことがあります。敷布団のことです。もうそれも相当になったでしょうが、夏のうちにとりかえてはどうでしょう、そして頭の方の角《かど》を[#図3、縦長の長方形から、上部の角
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