んという子が来ます。この子とひさと二人で島田に行っていた間留守番をして居りました。ひさとか栄とかかちあう名はあるものね。但この栄はずっとしぼんで素質の小さい栄ですが。では又。この頃真白い紙はタイプライタアの紙しかない、何故かと思います。皆スジ入り。お大切に。

 六月四日(消印) 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(はがき)〕

 このハガキは差入についての走りがき。
 ※[#丸付き一、322−4]帯は夏だけもてばよいつもりです。あの方が軽くてすこしはよいかと思います。※[#丸付き二、322−4]二枚の単衣のうち、紺の方は、些かおしゃれの分です。もう一枚の方がいくら洗ってもよい分。二日にそのことを忘れて申しませんでしたから。紺はそちらで洗わぬこと。※[#丸付き三、322−64]ああいう下にはくものはいかがなものでしょう、暑くるしくあるまいとも思いますが、試みに。手紙はこれとは別。

 六月五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 六月四日(白い紙特にこの紙は書きよい、タイプライター用ですが。) 第二十六信
 さっき十二時のサイレンが鳴ったところ。(この辺のサイレンは、学習院前の小
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