。
きのうは、じっと寝たまま、多賀ちゃんといろいろ話し、野原の家のこと、こちらのことなど話し、こちらの方も二人の男がいなくなればどうしても多賀ちゃんにいて貰わねばならず、多賀ちゃんとしては富雄さんが出たらあとの暮しをどうしようという心配がある。そこで、今は又養鶏がよくなっているから(支那卵が入らぬ)鶏を五十なり百なり飼い、やがてあすこへ何か出来たら人をおいてそれであちらの暮しは自転してゆくようにし、多賀ちゃんはとにかくどちらかが還る迄ここで手伝って貰うこととし、その代り今十円の給料を十五円にして、十円野原へやるとしても五円のうちは自分のものとしてためられるよう、それは私が当分持って出すことにきめました。お母さんとしては十五円はお出しになりたくないそうですから。私としてもその方が安心でよい。貴方もこの方法には賛成して下さるでしょう。そして、こちらの家計は、お店はやって行けることだし、負債は殆ど全くないのだし、銀行へ行っても大分丁寧な挨拶をお受けになるそうですから、決して心配はいりません。このことだけは安心してよい。話のときは、永年の生活の習慣から、他の半面ばかりを出す癖になって居られま
前へ
次へ
全473ページ中81ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング