ょう(九日)午前九時に入隊。それからのことは分りません。隆治さんがきのうは柳井まで送りました。同年兵が今度は何人も出かけるそうで達治さんの乗る汽車にも沢山のって居りました。もし私のいるうち宇品からでも出るようでしたら、お母さんのお伴をして送りにゆきましょう。
こちらのガソリンは一ヵ月千キロ平均のマイル数に対して、一日五ガロンつまり一五〇ガロンです。それでどうにかやって行ける由。バスなどは往復回数を減らして居ります。運賃ももとより高くなったが、トラックがどっさり徴発されてこちらにのこっているのは尠いので仕事は沢山あるそうです。従って、商売はやってゆける。どちらかと云えばよくやってゆける風です。けれども隆ちゃんが入営すると、一人も男手がなくなるから、自動車は休車にしておく計画だそうです。一人の日給が人夫で二円―二円五十銭で、仲士と運転手とをおけば少くとも百二十円はかかり、それではやって行けないとのお話です。又、雇人だけでは又別にいろいろお困りらしいし。こちらの物価は二三割上ってはいるが、東京程多角的に生活に迫って来ないようすで、こちらの景気はどうですか、ときくと、誰も一様にぼんやりと、大
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