全くの愛情と正当さから云われたことだのに、あんな顔になってしまって、さぞ当惑なさり、おいやだったでしょう。御免なさい。
あの日は、前日からいろいろと何年も前の日や夜のことを思っていて、感情がそのように傾き、心持が皮膚をむき出していたところへ、本のことや何か、大変苦しく感じた上だったので、思わず、そっちの感じがこみ上って。何年めかに私のべそをかいた顔を見せて、やっぱりあの上気《のぼ》せた顔が、貴方の目にのこっているでしょうか。話が短い時間のために、一面にだけ区切られ、そうは分っていても、出た面だけがともかく一応その日からこの次お目にかかる迄目の前にちらついていて、何だか苦しいこと。私はその点では全くいくじがないと思う。あなたの目つき、顔つき、肩のありよう、そういうものが、感覚的に苦しい。貴方が不本意であるというそのことが、既に切ない。
お話のことは、その本質の深さや正しさや意味の含蓄が、非常によく分りました。
せき立てられるようにして聴いたり喋ったりしていた時とは比較にならずよくかみこなしてわかって来ました。私としては主を従にして考えたつもりではなく、確にあわてたこともあり、且、永
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