フもこの頃でしょう。
 目白へ家をさがした心持は、思い出一しおの故です。Sさんはその年の九月ごろだったか公判のために上京して、戸塚の下宿にいました。ちょいちょい出入りしていて、お金にこまり、ぜひ東京にいたいというので、私はすこし助ける意味で、新聞の切ぬきの整理をたのんだり、本のカードの整理をやって貰ったりして、十円までのお金あげていた。もとから智恵子さんを知っていたのだそうですね。そっちはそっちで進行していたわけです。家をうつるとき、あっちへ一緒になる迄、田舎の送金がなくなったからという理由で目白に来て、二月まで二ヵ月いた。二月に職業を見つけてアパートにうつり、それからこの八月結婚するまでズッとアパート。一月の終りか二月の初めごろ既に先の話は破れたのです。対手の人はこの家へ二度ぐらい来ています。その二度目ぐらいのとき、私がいつまでS子さんをここにおく気かときいたら、それは本人に云うとか云って、かえるの待っていて、ちょうど稲ちゃんが来ていて、変にきまずくて一座白けていたら、外出から戻ったS子さんをつれ出して、話をことわった由。
 この人は、それから一遍宮崎龍介の母を訪問したとか云って一寸
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