Nのいろいろな御誕生日がめぐり来りますね。こうして、くつろいで、原っぱの上に濃くおりている夜霧や、その夜霧を劈いて流れている工事場の電燈の光の色やを思い出すのも愉しい。
 昨夜は、夕飯がすんだとき、さち子さんが岡山の栗をもって来たので、小母さまがそれをむいて、私もむいて、火鉢の灰にうずめて焼いて、私は初めてやき栗というものをたべました。Tは、焼きかたを忘れて、いきなり火に近くおいたので、はじめの分はこげて妙でした。二度目はうまく行った。子供のうち、あなたもよくなすったってね。先へひろってたべてしまうので、Tさんがさがして、ないようになったと目をパチクリさせたと大笑いでした。
 野原での伝説にはいろいろあるが、顕ちゃんの風呂たきの一条は小父上さまもお話しになったし、小母さんも何遍も何遍も仰云る。昨夜も又出てそれを又私が飽きもしないで、はじめっからおしまいまで話して貰って、初めて聴いたとき同然可笑しがって笑う。大人になっても、きき飽きないお話をもっているというのは、やっぱり仕合わせの一つにちがいありません。
 むいた栗ののこりは、今下の火鉢にかかって居ります。ふくませに煮ます。
 甲府から
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