rを出している。「どうもこれじゃ応接間をつけたところで……」と留守の間に云っていた由です。一寸ついている竹の袖垣をその形ごとはずし、ジャッキでギューと持ち上げて四本の柱の根つぎをし、あっちこっち家が真直になったために壁が落ちて、夕刻は大工の方はおしまいというスピードでした。
何という日本の家の便利さ(!)でしょう。何たる積木《つみき》如きものを建物と称すことでしょう。土台五六寸新しい柱を立てて、ジャッキで家ぐるみもち上げていた柱をストンとおとして、自然の重量で、くっついている。クサビもなければ、かみ合わせもない。そういう柱! で支えられている、この地震国の家。家をハウスと訳すのみならず、ホームでもあるし、命の箱でもあるし、私は手早さに感歎すると同時に、アナトール・フランスが「昔物語」で云っているような都市の歴史的な豊富さ、住宅の持つ歴史的内容というものが、こういう建物で間に合わせて雨露を凌いでいる習慣の中には、決してその興味ある堆積をなし得ないのを、実感しました。ゲルツェンの家を作家クラブにもなし得ぬ。卵橋(ポンヌフ)の河岸につらなるパリの十六世紀からの住居の美もあり得ない面白いもの
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