四月以来初めてだと云っていらっしゃいました。この四月以来ですって。三十何年間の話ですね。
 ああ今やっと隆ちゃんたちが戻って来た。お母さんが「お父さんの命日にお前」何とか、心配したことを話していらっしゃるらしい。私も下りて見ましょう、おやこれからお昼らしい、カチャカチャ茶わんの音がする。「百合子はん一寸来て見てつかわせ」何だろうと行って見ると室積では鯖《さば》が十何万疋とれてこれから又広島へそれを運ぶ、一寸よってお昼をたべているのだが、トラックにのって来た人が二十五疋ばかり鯖をくれている。うらや前やに分け野田さんが来たのにも分ける。お父はんの命日にというあとは、よく稼いでよろこんでじゃろというのでした。御燈明がついている。昨夜からかけて70[#「70」は縦中横]ばかり稼ぐらしい、こんなことは何年にもないとの由です。では又。隆ちゃん夕飯代二人分一円もらって又出てゆきます。

 七月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

 七月十二日  第三十五信
 島田からおしまいの手紙を書きます
 十日にはお父様の三十五日が無事に終りました。八日の午後から徳山の岩本のおばさんがカヅ子
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