たという故事のあるところ、あすこへおつれ申そうかと云っているところです。お母さんには御丈夫な上にも丈夫でいていただかねばなりませんから。おなかはこの気候でも大丈夫でしょうか、呉々お大切に。近ければ一寸かえるのに。では又ね

 六月二十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

 六月二十六日  第三十二信
 さっきから机の上やトランクのところやあっちこっちさがして、がっかりして坐って下から持って来たこのペンで書きはじめました。ペン先を紙に少し包んで持って来たのが、この間野原へ行くとき机の上を片づけ、何かと一緒にまぎれてすててしまったらしい。御愛用の金Gがこの頃益※[#二の字点、1−2−22]大切になって来たので箱から分けて来て却ってバカをしてしまいました。
 さて、十八日づけのお手紙をありがとう。お体のことについて書かれているところが消してある。あなたが何か書きかけたのを消していろいろ気をつけるとかいてだけある。それは、大変私の想像を刺戟しているのですが、どうなのかしら実際のところは? 本当に大丈夫でしょうか。少しよろしくないがいろいろ気をつけているというわけでしょうか、そ
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