る考えをのばさせます。しゃんとした理論の要求も要するにここのことですから。白米食を全廃せよ、いやそれは保健上有害である。では云々。そういう昨日、今日、うつる提案につれて文学も文学であることを急速にやめている。
本当にプログラムの問題は面白い。私は文学におけるこの問題の正当な健全な発展と、自身の昨今の勉学とを全く骨肉的なものとして理解しているから、その統一的な成長については丁度、まだどういう答えになって出るかはっきりは云えないが、その質は既に決定された或科学的実験をやっている最中のような注視と観察とがあります。益※[#二の字点、1−2−22]科学性をたかめ、真実のために没我でなければ、文学のプログラムの真髄はつかめようもない。そこまで到達し難いから、文学の諸問題にしろ、現象主義でいけない、いけないという現象性の範囲に止められてしまっているのであると思います。
丁玲に『母親』という小説があって訳されている。どんなのでしょうね。こちらで買って見ましょうか。コヤさんの訳した『馬仲英の逃亡』というのもある。
十二月に入ったら書くことはじめると云っていましたが、本年一杯は読む方専門にしました。現象主義でいけないという限りでは仕方がない。それに、私の大掃除の方も次第に底をつきかけて来ていることが感じられ、それは一方により明確にと進む作用なしでは実際の摂取が行われないから、せっせとよむこと、最も自省的によむこと、只今の時期の自分に百枚書くにまさると感じますから。
そして、今年の一番終りにあなたのお手に入るよう体すっかりちゃんとしたら、私の方からも、総括的な自己省察のトータルをお送りいたします。これまで、私が、いいとか、わるいとか、そういう感情的なものにこだわっていたこと(前便、きのう一寸ふれた)が、この頃よく自覚されて来ているから。いろいろ細かく、心理的にかいて見ましょう。一度ですまず、二通に亙るかもしれない。これらが本年度の私の最も価値ある収穫となるだろうと思って居ります。ではこれでおやめ。もし、あなたも風邪気で咳が出て、胸へ響くようであったら、すぐエキホスの湿布をなさいませ。あなたにはそういう時、特に湿布が大事です。どうぞ呉々もお大切に。弁護士のこと、衣類のこと、本のこと、大体一片ついていて、こうして動けないでも、些かは心平らです、本当によかった。『支那地名人名』は十八日に出る由です。
十二月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十二月十二日
エキホスがきいて胸の気持が楽になり、きょうは例の五時すぎに七度三分。喉も大分ましです。変な声を出して耳の中へ自分の声が響いてこまりますが。寿江子それでもきょうお目にかかりに行って。たまには私がかぜをひくのもよいかもしれない、彼女のために。大変丈夫らしく見えていらっしゃるとさち子さんも云い、寿江子も云い、栄さんも云ったから、本当なのでしょう。うれしいこと。私は毎日よくばった気持で見ているし、細君と友達とではそちらの気分も又おのずからお違いになろうし、私にはなかなかまだよくばった望みがありますが。
明日も行けない。繁治さんが時間のくり合わせをつけて何とかして行きたいと、先日から云ってくれて居りますから、誰も別の補充は立てず。但、用事を手紙で申します。
弁護士のこと。別に二人の人がわかりました。一人は小沢茂氏。この人は初め栗林氏と共についていて、後ことわられた人。理由はやはり同一の由です。明治大学出? か何かの若い人。私に西巣鴨で会ったことがあるという話の由。私は、ではあの人だったかと背の高い若い人が思い浮ぶ範囲です。話らしい話はしたことなし。ことわられたからそれきりになっているが、やる気はあるのだそうです。一般的に云って。
森長英三郎氏。年や学校についてはわかりません。昔武麟や立信がお金のことで立ったとき、扱った人の由。近くは大森の人の御主人の関係でもう終ってかえっている女の人の事件を扱ったそうです。女の人というのは誰のことであるか不明です。もし大森のひとであれば自分で知って居り、又思い出すでしょうから。この人は音羽に住んでいる由です。
どうかお考えおき下さい。大森のひとの経費は、大阪につとめている弟さんが支払うことになって居る由です。
風邪になってしまったので、どちらにもまだ手紙はかいて居りませんから。それも御承知下さい。私は今度は木曜日には行きたいとプランを立てて居りますから。
寿江子の伺って来た本のこと、わかりました。私も興味もって居りました。しらべましょう。文芸附録も『ロンドン』より『ニューヨーク・タイムス』にしようかと考えて居ります。利用する価値は『ニューヨーク』の方があると考えられますから。アメリカは国際翻訳協定に入っていませんし。
いかにもかぜ
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