Z・三
26 六・五五 六・五 十時 六・四
27 七・一〇 六・三 十時半 六・二
28 六・二〇 六・二 十時五分位前 六・三
29 六・一〇 六・四 十時 六・三
30 七・十五分 六・三(音楽 原智恵子のピアノ十一時四十分)六・四
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原智恵子という人は初めてききました。有島生馬がパトロナイズしている人で、近頃何とかいう映画監督と(パリにいた)結婚した。井上園子のピアノと全く正反対で、音色もテムペラメントも、井上がウィーン風・貴族的・近代アカデミックに対し、原のは所謂箇性的で、音色は極めて鮮明で現実的(やや玄人的スレさえも加えて)、原が意識して井上園子と対比色をつよめていることが、なかなか面白うございました。
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十二月十日午後 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十二月十日 第七十七信
ベッドの上で一寸一筆。
お休みにしないように気をつけていたのに、やっぱり駄目で、どうもすみません。
熱は大してなく、昨夜一番高かったと云っても七度五分でした。今日は六・八位。喉や鼻よりいきなり胸へ来て(今年の流感の特徴です、いやね)湿布さわぎをやると困るので、自重している次第です。予定では月曜にゆきたいが、どうかしら。
もし熱があって、感じが熱っぽかったら気をつけてやめます。
この間うち、右の眼玉の底が妙に張って来るように痛んだので、あら盲になったら私は大変こまる、あなたに触って話すということが出来ないのだもの、と考えていたら、それは風邪の先駆でした。
きょうは太郎の誕生日で、晩食に招《よ》ばれていましたが、おやめ。ひどい風が吹いている。どうか、呉々あなたも御気をつけて下さい。よくない風邪のたちだから。グリップは妙で、後になる程重い。だから今年はもうこれで、厄《やく》のがれをしたとよろこんで居ります。
けさ、お久さん、火鉢の火を入れに来たとき、真先にお手紙をもって来た。どうもありがとう。本当にありがとう。この手紙は確乎たるものを語っていると共に、大変心持のよいものをも含んでいて、うれしく拝見しました。話すに足る対手である最小限進歩線であるというところを読んで、思わず、そりゃそうだろうと自分に云って笑ってしまった。全くそうだろうとしか云えない。斯うはっきり云われているとズッパリして、快活な勇猛心を励まされます。
今年の暮はね、私は特別な心持で、来年を迎える仕度をして居ります。我々の生涯に様々の歳末がめぐって来たし来るであろうが、今度はその中にあって、やはり特別な心のこもる一つです。心からあなたの健闘を祝し、自身の向上への努力とのために、簡素で、真面目で、しかも明るい希望の射し通した新春を迎えようと思って、仕度をして居ります。自分の心持もややそれに適したまとまりが出来て来たし、経済的な面も処理し、自分で正しいと思えない方面へ文筆的に利用されるよりは、その拒絶の結果が、日常性の中でどのような形体をとって現れようが、それでよいというところに落付いているし、自分の真の成長と発展とのためには、益※[#二の字点、1−2−22]ぴったり益※[#二の字点、1−2−22]集注的に二人の生活というものの裡で吸収、呼吸しなければならないことも愈※[#二の字点、1−2−22]《いよいよ》明瞭となっているし、来年は、大変たのしみです。今年の後半に、どうやら身につけた前提的な日常生活の条件(早ね早おきからはじまって、経済的な面での処置など)の上で、来年は勉学もすすみ、生活に生じて来る様々の現象にもやや可《か》に処すことが出来るだろうと思って。
その舟がどういう舟とは云い現わせないが、私は、あなたの乗っていらっしゃる船の中へ、一層身を落付けてのり込んだ気持です。よく手元を見ていて、足の構えを見ていて、そこから学び、やがて一人前の漕ぎ仲間となれるように。凝っと見ていて、考えて、会得してやって見てゆく、そこに何とも云えないたのしさとよろこびを感じます。
あなたは今年のお歳暮に百合子論を下さるわけにはゆかないでしょうか。最も真面目な意味で、総括的に、展望的に、そしてきょうの手紙のような立派さで書かれた百合子論は実にほしいと思います。低俗さ(あらゆる面での)を、私は否定しません。否定出来ないことだもの。低俗さがそのものとして現実的に納得批判され、高められるためには、より高い規準こそ必須で、当人は主観的にはそれが分っているつもりで、実はいつしかそのものが低まって来ているような時代的特徴について、私は主観的なものに立っていて、なかなか承認出来ない形であったと思います。科学的であるか、科学的明確さに立って現実を見ているか、それとも主観的な道義感みたいなもので立っているかの
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