ノ、それにこりかたまったようになって手足働かさず思いにとられているようなところが時々あるのがわるいところだし頓馬さや非事ム性やらになって出る。どうでもいいやというところからのサボなんかありようないのですものね。いろいろこういうことはいりくんでいて面白い。追々勉強が身につくに従って動きも本質にふさわしい活溌さ、正確さ、客観性を増して来るだろうと感じられ、建設の原理が、手足について来るだろうと思うと、本当に愉しい。そして、勉学はいっそう無駄なく深く、仕事はいっそう骨格をつよめ、肉をゆたかにつけ、而も脈々として動きの中にあり、それに作用する実力をこめているようになったら、どんなにうれしいでしょう。このことと練達な生きて、強固な生きてであるということは全く切りはなせない。ジャーナリスティックであるなしも、けっきょくはここにかかって来るのであると思います。大いに本人はがんばっているつもりで、本質的にはジャーナリスティックな足場のみであるために、生活の現実でもんどりうってひっくりかえった実例を近く見ましたから、実によくわかった。ジャーナリスティックな場合、どうしたって現象的ディテールを追って、それに対して[#「それに対して」に傍点]云々する場合が多く、従って文学理論の歴史から見ても、それを或時代から時代へ発展させ押しすすめる集積としての仕事になり難い。キュリー夫人たちが、生活のための教授とライフワークとしての研究を、強引にひっぱって行った態度は立派です。大した意力です。その二つの間で、重点を誤らなかったことが、あの成果を与えている。あれ程辛苦していて、それでもやっぱりフランスね。夏二ヵ月のあの暮しかた。それぞれの社会のもっている生活の幅ということも考えます。私も段々実のある業績を生めるでしょう。勉強をはじめてから、自分にも感じられる精神状態の均衡と密度の高まりがあるから。
つづけて読むものについて、すこし私の考えついたプランがあるからこんど相談にのって頂きます。今のはもう火曜日ごろ終りますから。
きょう私が感覚的な鮮明さで感じたことについて申しましょうか。それは人間にも鉄の鋳物《いもの》のようなのと、鋼鉄のようなのとあるということです。美と粗雑さとの相異が何というあることだろうということです。つやが何とちがい弾力が何とちがい、その緻密さと強度と何というちがいだろうということです。あらゆる分野において、人類の誇りとなった人々は常にその生きかたに後者の要素をもっている。しかも、やはり鉄の出です。混ぜかた、火のいれかたなどが違う。鉄はひとがまぜて火を入れるのだが、人間には自分でそれが出来る。ここに云いつくせぬ味があると思う。
きょう三越からハガキで、この間注文しておいた『私はヒトラーを知った』I knew Hitler が来た知らせをよこしました。あしたあたり届けて来る。そしたらお送りいたします。
書きぬき出来ましたが、スペインは少いこと。支那関係が四十六位のうちあの便覧に出ている著者は十人位。なかでは『支那革命の精神』の著者がよさそうです。(パイパア)ホルクームと読むのだそうです。
明日から二十七日一杯防空演習です。空からいろんなものが降るのですって。きょうは、丁度家にいたので四時に計ったら六度三分です。却って低い位。栄さん、来月の二日ごろ又お目にかかりに行きますって。今もう九時すぎ。これから風呂に入り、床に入ります。では又。風邪をお引きにならないように。
十一月二十八日夕 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十一月二十八日 第七十五信
二十五日づけのお手紙をありがとう。
先ず早寝のこと。それでも八点下すってありがとう。九時に切りあげることは着手しはじめました。おそくなる[#「なる」に傍点]のではなくて、する[#「する」に傍点]のだということ、これは本当だし、笑ってしまった。こういうことからもいろいろフエンして会得することがあります。した[#「した」に傍点]こととなった[#「なった」に傍点]こととの分別が明瞭を欠くところが大いにあるのですね、私の生活に。すべく意志して、した[#「した」に傍点]こと。それから、しまい[#「しまい」に傍点]と思ったがした[#「した」に傍点]こと。後の方をとかくひっくるめてなった[#「なった」に傍点]とする。貴方にはその区分が明瞭だから、した[#「した」に傍点]ことを「なった、なった」と云っていて、それは、理由づけにならぬ理由づけで、いかにも非理性的に見える。おかげさまで私にも追々はっきりして来ました。だから、なかなか早寝早おきも意味がある。ただつや[#「つや」に傍点]がましになる以上に。物事に対する態度が学ばれるから。だから、これからはこうきめます。早く寝ようと思うときには十時を励行
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