フ鍛練というか自省のモメントとして大いに考え考えやって居ります。道具と考えるほど大それていないのは、幸です。書きたいというのも術をかけて見たいのとはすこし違うのです。対象を通して勉強したい、その心持です。勉学は却って書きたい気をおこさせ、書きつつ又それをつづけるのは一層味ふかいのです。今のように、せっつかれないときに、はじめてそれが出来ます。今のところ勉学はやめられません[#「やめられません」に傍点]。その位面白い。この本は特に面白くて、かめばかむほど味が出る。この前にも一寸かきましたが、物理の問題にしろ、数学にしろ、生きた好奇心を刺戟され、精神のよろこびが察しられて来て、しきりにソーニャ・コ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]レフスカヤを思います。彼女はどんなに数学をとらえていたのだろうかと。私は一人、女のひとで数学の才分がすぐれていると云われた人を知っているが、そのひとは大変図式的な頭です。新しく動的関係で発見された方法を、形而上的なやりかたでやる。そういうのが多いのではないかと思い、ソーニャはどんなだったろうと知りとうございます。あの伝記には、そういう最も内奥的なモメントはとりあげられて居ませんものね。だから伝記もさまざまね。伝記の精髄(それぞれの専門において)がぬけた伝記も多いわけです。
きのうは、午後から『輝ク』の(時雨女史の会)歳末会があって久しぶりで出席したら私が丈夫そうになったと口々に云われ、何をつけていてそんなに艶がよいのかと云われ、一々朝起き早ねをその原因として申しのべました。どうもありがとう。残念なことにはそれにつけ加えて一々、それは誰が私に仕込みつつあるかということを云えなかったことです。つやがすこしよくなればすぐ目をつけてくれますね。もっとせっせと垢《あか》おとしをやっているところのつやについては皆目めがつかぬ。あなおもしろ。ふと、日を考えちがえしていて、きょうは二十一日ね。手帳を見て、丁度表のためにも区切りの日でした。
では、お約束を果して、この手紙はおしまい。花は二十四日ね。
表
起床 計温 就寝 計温
11(金)六時四十分 林町デ熊ニナッテ居テトラズ 十二時十分 六・七
12 六時四十五分 六・五 九時 六・四
13 七時 六・五 十時十五分 六・三
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