トもいただきたいと思って。
林町の連中には、私がかえってからまだ会いません。あっちが国府津へ行って居たので。太郎にお母さんが下さった大きなコマをもって近々出かけます。栄さんは「大根《ダイコ》っ菜《パア》」という子供を主題した独得の小説をかきました。これは面白い。稲ちゃんは地方新聞に長篇をかいています。これもよい修業です。M子は毎日よく働いて月給四十円になりました。うちで御飯をたべている。
この頃、二階の北の小窓から見ると欅《けやき》の若葉が美しくて、美しくて。新緑の美しさは花以上です。お体は大丈夫なのでしょう? 近いうち、活々とした初夏の模様の手拭とすがすがしいシャボンをさしあげます。それらのものはここで新緑をうつしている皮膚の上にも。
仕事をすましたらお目にかかりに行きます。
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[自注13]お久さん――埋橋久子。信州の人、目白の家で三年間位百合子とともに暮した。
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五月六日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(外国風景の絵はがき)〕
五月六日。何というひどい風が吹いたことでしょう。きのう「山本有三氏の境地」三十九枚ばかり終り
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