んを中心に活々《いきいき》と軸がまわっていて、又別な楽しさ、安らかさです。
今度来て本当によかった。
お医者も特別に誰というお好みはありません。しかし、お父さんは昼間お眠りになりすぎます。これは、やはり全体の御衰弱ですから、余り油断はならないと思います。あなたの方はずっとおよろしい方ですか? 食慾も出て居りますか。どうか、どうか、お大切に。ここにいると何だか遠いようです。私はこちらですっかり疲れをなおします。では又
[#ここから2字下げ]
[自注10]お后《ゴー》――顕治の故郷の地方では、おくさん、おかみさんをお后《ごう》はんとよぶ。
[#ここで字下げ終わり]
三月二十九日(消印) 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 厳島より(安芸の宮島廻廊より千畳閣を望む絵はがき)〕
ここは大変に明るい美しいところでびっくりしました。清盛という人物が只ものでなかったのがよくわかります。よい天気。お母さんと、砂と松の間をふらりふらりと歩いて、よい散歩です。あなたもここは御存じでしょう?
三月三十一日午後 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕
三月三十一日 ひる少し前 曇天。
前へ
次へ
全235ページ中60ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング