云うと、私たちの生活は、貴方と私とが互に深く豊富な自主的生存の自覚、情熱に対する自主的な責任をもっているからこそ、特別な事情の中でも発育し、ゆたかに美しく花咲いているのだと思います。私があなたの妻であるからというだけで、私は貴方に対してこのような私の心を傾けているのではないのです。私が私で、そして貴方をしかく愛するからこそ外部的な力で破られぬ結びつきをもち得ている。そして、そのことが、現代の日本の法律の上で、特に我々の場合、別々では不便を来しているから、習慣に従って姓名を貴方の方のと一つにしている。そうでしょう? その方が本当というのは、特に私たちの場合、何だか私の感情の、これまで生き貫いて来た、これから生き貫こうとしている感情の全面の張りにぴったりしない。私は、可笑しい表現だけれども、中條百合子で、その核心に宮本ユリをもっていて、携えていて、その微妙、活溌な有機的関係によって相互的に各面が豊饒《ほうじょう》になりつつあること、強靱《きょうじん》になりつつあることの自覚を高めているのです。私たちの生活の波瀾を凌がせ、揺がせず、前進させている私の内部の力は、こういう力で、大局的に貴方の生
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