安心させ申すために私がいく分心をつかっていることもわかって下さっている。
野原島田へお送りするについてのお願い、あれももうお読み下すったかしら。
いろいろの私たちの生活の悲喜をひっくるめて、とにかく私はいい仕事がしたい。とにかく私たちの仕事であって、他の何人のでもないという血と熱との通っている仕事をしたい。小説でも。評論でも。私たちが素質的にもっているものの価値というものあるとすれば、其は要するにこういう望みを忘れることが出来ないで、そのために努力しつづけてゆく気力が即その価値であるとでも云えるかもしれない。私の芸術家としての困難は、人間的生活経験の内容が複雑豊富でそれをこなす技量がカツカツであるという点です。生活内容に応じては技量があまっていた時代、今はその逆の時代。それに私は何だか持ちものが、これまでの所謂小説家とちがっているのだが、それが芸術的完成にまで到達していない、美しく素晴らしく脱皮し切っていない、そういう実に興味深い未知数が現在あるのです。稲子はいつもよい批評家であり鼓舞者で、私は注意ぶかくその言葉を考えながら、謂わば自分の発掘をしているようなところです。その点からで
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