ケしめません。あなたとしてそれらを持って動じぬことで自然な恢復力を蓄積していらっしゃることは当然のことであるけれども、私が其を刻々に知らされないことは、考えて見れば、あまり特別です。あなたからしか謂わばあなたの体のリアリティーは知ることが出来ない。私が根もとの安心というか持久的なものはたっぷりもっているということがよくわかっていただけているなら、私は常に具体的にあなたの体の事情について知っていて、私としてするべき様々のことをしたい。この間もお話ししたように、互の間にある安らかさというものの能動的な具体性はあるのですもの。例えどんな小さいことでも。どんな一寸したことでも。私は古風なロマン主義者でも巫女《みこ》でもないから、最も大切なものをアブラハムの祭壇にただのせて主観を満足させてはいられない。
どうかこれから出血でもあったり、何か変ったことがあったらきっと電報を下さい。きっと。私が右往左往的心痛をするだろうという風な御心配は本当に無用です。私は逆から云えばあなたに安心されている証左としてもそのようにして頂く権利があると思うの。よほど前、咲枝に下すったお手紙で、ユリの体についても何につ
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