九信
二十八日に第二十八信を書き、引つづきこれをかきます。先便の主な内容であったことが変って来たので。XとDさんとのことは、初めから、私共はたで何だか合点ゆかぬものあり、又、あっちの家庭関係では、どうしても折合ず、困難であったが、Dさんが昨日Xに自分が軽率であったこと、阿母さんのXがどうしても嫌な心持は彼にも反映すること、一緒に生活しようとする計画は絶望であること、XはXとしての生活を立てるようにとなど話した由。
Dさんの家庭とXは久しい以前から知っていて、その私の知らなかった時代にXは、善意からであろうが、智恵ちゃんや阿母さんとして忘られぬ深刻な打撃を与えていて(療病に関し)迚《とて》も妥協の見込みないわけなのだそうです。
僅か一二ヵ月の間に自分達のみならず周囲にも浅からぬ波を立て。軽率であったという言葉以上のようなものです。
私の心持では、斯様のこと、分るようで分りかねるところがある。どんな気持で人生を見て、自分の一生を見ているのか。生活をよくして行こうとする意志とか努力とか知っていて、云っている人でも、何だか釘のない組立てもののような工合で。実に変な気がします。私としては
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