蝠マ抽象的だがお分りになるでしょう。とにかくあらわれた形はどうあろうと我々の生活の成長のためにこそ活用されるべきなのは云わずとものことなのだから。
 私の盲腸何とうるさい奴でしょう。此奴《こいつ》のために、私の休養の形は安静、床に休むことになって来る。おなかの右下四分の一にだけ邪魔ものがいる。きのうきょう、これがバッコしているのです。今月のうちに科学と文学のこと(科学ペン)婦人作家の今日(文芸復興)この間ハガキに一寸書いたブルムの結婚観の批判(婦公)をかき来月から又すこし沢山小説をかきます。ではどうかお大事に。

 八月二十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 国府津より(絵はがき二枚 小田原海岸(一)[#「(一)」は縦中横]と小田原駅(二)[#「(二)」は縦中横])〕

(一)[#「(一)」は縦中横]八月二十八日午後二時すぎ。
 国府津へこの頃通用するようになった全国速達で原稿を出しに来たついでにバスで小田原まで来ました。この駅の右手にコウズのあの茶屋が大きい店を出している、そこで今御飯をたべようとしている、赤く塗った椅子その他、箱根気分のところです。国府津からバス20[#「20」は縦中横]銭
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