アの猫は前便に書いた猫、ひどい好人物的猫で、猫を好かないものの家にいついてしまいました。仕方がないから戸に切穴をつくった。仕事をしていると別の椅子の上で丸まって他愛なく眠っている。夜中になると黒い真丸い、美しい表情になって、私が下へおりるとついて二階にあがって来る。犬の子のように先へハシゴをかけ登って。ところが私は何としてもニャーを寝るところへは入れられない。いやなの。下へおろすに、一寸遊ばしてホーラ、ニャーと足袋を片方下へ投げると、この猫はいそいでおっかけて降りる。その間に私はかけてスイッチをねじって障子をしめてしまう。このような余興。
島田がおよろしいのは何よりです。この時候のわるいことは、だが、何ということでしょう。
六月に『文芸』へ「山本有三氏の境地」という作家論をかきました。勉強して書いたの。
それから今、ウィーンのワインガルトナーというオーケストラのコンダクタァが夫人と来ています。二十八日にききに行った。いろいろ芸というものについて、こういう出来上った大家の持ちものを観察したわけですが。ベートーヴェンの第六シムフォニイ、田園交響楽というの、あれはやっぱりその理解の点で
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